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Author:深沢千尋
みなさんこんにちは、深沢千尋です。(公式ページ
文字コード【超】研究 改訂第2版NEW!」「すぐわかるPerl」「すぐわかる オブジェクト指向 Perl」の著者です。
ここでは、多くは技術的でないこと、ごくまれに技術的なことをなげやりに書いていきます。
メールは suguwakaruPerl@gmail.com まで。(アットマークは ASCII に)
Twitterはじめました。@query1000です。よろしく~

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書評「上達の法則」

ブログを始めるときは、書評が中心になると思っていた。

活字中毒な方で、いつも本は持ち歩いて週5冊は読んでいるから、それを片端から紹介してアマゾンのアフィリエイトを張っていけば、それなりに格好がつくと思っていたのだ。
それが、そう思ってブログを始めると、そうでもないことに気づく。
わざわざ公の場に文章で紹介するほどの本でもない本を多く手にとっていたことに気づいたのである。
そう書くと生意気なようだが、本心なので仕方がない。
そもそもブログで本を紹介するからには、以下のような本であることが望ましい。
・是非多くの人に手を取って欲しい良書である
・自分ならではの紹介ポイントがある
・その本について語ることで自分の考えの一面を語ることができる
そういう見地で普段読んでいる本を改めて眺めてみると、わざわざ語りたくなるほどの本でないことがほとんどだ。
考えたら当たり前かもしれない。

最近は本を買って読み始めている段階で、ああこんな面白そうでよく売れていそうな本をブログで紹介できたらなあと思っている。
ポイントになる文章を読むたびに、この部分をこう紹介してやろう、などと思う。
面白いと、いいぞいいぞ、がんばれ、などと、運動会に出ている子供を応援する親のような気持ちになる。
するとそういうときに限って、子供はつまづいてひっくり返り、よその子にどんどん追い抜かれて泣きべそをかくのである。
逆に言うと、公の場で書評してやろうと思って読んでいればこそ、生半の本では感動しないような厳しい批評的な目で見ている、そういう目を身につけたということかもしれない。
であれば、それはそれでいいことなのかなあとも思う。

つまらなかった本を読んだら酷評すればよい、ここがよくない、ここが違うと思う、などと書けばよいとも思っていた。
しかしいざやってみようとすると、これがなかなか出来ないのである。
・本名でブログを書いている
・一応自分も本を書いている
・本を書くことがどんなに大変か一応分かっていて、それをカンタンに酷評されることがどれだけ辛いか分かっている
ということがどうしても影響するのである。
もちろん、本を公の場に出した以上、批評にさらされるのは仕方がない。
酷評されるのもお駄賃のうちである。
お客様の声は天の声と聞き、謙虚に受け止めて勉強させていただくのがよい。
それは分かっているが、じゃあ人の本もバシバシ自分の好みで斬りまくっていけばよいかというと、ハタと手が止まる。
そこまで確信を持って人の本を酷評できるのか、発言に自信を持てるのかというと心許ないのだ。
要は弱いのである。それは分かっている。しかし人間の能力には限界がある。
とにかく今は、つまらない本を、いくらつまらないと思っても、わざわざ斬るような心境になれないのだ。

ということで、ブログで本を紹介するのは、読んでいる本の30分の1ぐらいの見当になりそうだ。
しかし、ごくたまにしか本を紹介しないと、今度はそれほどこいつ本を読んでいないんだなァと思われそうで、それはそれで業腹である。
いろいろ気にしすぎだから!
まあそういうわけで、今回本を1冊紹介させてもらうわけだが、それまでに数十冊の本を読んで、どれもそれほど面白くなかった、ということをわざわざ言い訳させてもらいたい。
いやでも、ここまで紹介する本を探すのに苦労するとは思わなかった。
ちょっとビックリ。





新書の自己啓発本である。
「英会話の上達法」「マラソンの上達法」「スケッチの上達法」など、世にxxの上達法を語った本は多い。
しかし本書は、一般的にあらゆることに上達するとはどういうことかを、心理学の立場から説明した本である。
もっとも薄い新書であり、平易な言葉で語らなければならないこともあって、それほど豊富な内容が語られているわけではない。
むしろ、もうちょっと踏み込んだ内容を書いてくれてもいいのになーとも思った。
しかし、最小の要旨であるスキーマ、チャンキング、コード化、美観の付与といった内容は説得力があり、自分なりにいろいろな技術に容易に応用できるとも思った。

本書の面白いのは、そういう要旨を肉付けする豊富なエピソードである。
本書の著者は本業の心理学の他に、将棋、茶道、陶芸、バロック音楽、テニス、写真、英会話、自動車運転などに詳しい。
いや、ぼくはこのどれにも詳しくないので、本当に詳しいのか正確には判断できないが、とりあえずこのどれもがものすごく好きなことは確かなようである。
ある技芸を上達するとき脳の中で何が起こっているのか、その何かを起こすのにはどんな鍛錬が必要か、ということを書くたびに、ある将棋の名人はこういうことがあってこうした、あるテニスの技術はこういうところがあるがこうやって習得するそうだ、というエピソードがおびただしく書かれているのである。
有名なエピソードであったり、「テレビで見た」というエピソードであっても特に躊躇なく書かれているし、親しくしている芸術家からこっそり伺った話のようなものも惜しみなく書かれている。
これが面白い。
この将棋の上達法とこのテニスの上達法は脳のこの部分を共通して使っている、と書かれているわけだ。
読んでみるとそういうことがあることは確からしいが、そういう本を書ける人が世間にどれだけいるだろうか。
そうやって考えると、著者の博覧強記ぶりを楽しむ本とも言えそうだ。
そういう意味でも、値段を倍にし、厚さを倍にして欲しい。
筆者は心理学の専門書の他に、茶道や将棋の本もあるようで、全部集めて読もうと思う。

さて、本書で繰り返し出てくるのが「コード化」という概念である。
よく知られているのが、人間は最も揮発的な短期メモリーは7つ(7チャンク)までしか同時に記憶できない。
5713、などと意味のない数字を4つ覚えるときは、そのチャンクを一気に4つ使ってしまう。
しかし、たとえば2816という数字を覚えるときに、「二・八=十六」という九九の教養があれば1チャンクの消費で済む。
このように冗長な情報を短縮したコード(符号)に変換するには教養が必要であり技芸が必要であるが、逆に言えば教養、技芸を豊富に持っている人はコード化に優れているので、同じ脳を使って大量の情報を処理することが出来る。
たとえば将棋であれば序盤の定石ということで十数手を一気に習得している人の方が、一手一手を真剣に検討しなければいけないひとよりも上級者であることは確かである。という話。

なるほどとも思うが、ぼくはあることに熟達するためには逆に「デコード化」という技術も必要だと思う。
たとえばコンピューターをやっていると頭字語をおびただしく覚えさせられる。
パソコンのカタログ1つ取っても CPU、HDD、MB などという略語のオンパレードである。
こういうのを、たとえば CPU ならば Central Processing Unit であり日本語では中央演算装置という、ということをマメに調べて一遍に覚える人と、そうでない人がいる。
この場合、マメに調べる人の方が、同じことを学ぶのに手間を掛けている。
情報をわざわざ冗長化して、余計なことまで覚えているからだ。
しかし、この場合はお分かりのように、情報をわざわざ冗長化してからまとめて覚えてしまった方が「全然ラク」なのである。
CPU を「しー・ぴー・ゆー」というキリシタンバテレンの呪文のようにして覚えていく方が、よほど骨だし続かない。
しかるに、世間の情報はみな符牒化されていて、それを端から意味もなく覚えることが要求される。
この場合は、余計な手間を取って(ネットの神様が降臨した今、たいした手間ではない)いちいちコードをデコード化し、物語化して覚えていったほうがより知識は血肉化するのではないかと思う。

あと、世の達人と呼ばれる人は「ウソ知識」を振り回す場合も多い。
有名なのに「サイコロの丁半ばくちは、丁は1-1、1-3、1-5、2-2、2-4、2-6、3-3、3-5、4-4、4-6、5-5、6-6の12通りに対して半は1-2、1-4、1-6、2-3、2-5、3-4、3-6、4-5、5-6の9通りしかないから丁が有利」などというのがある。
これは昔「アカテン教師梨本小鉄」という少年チャンピオンのマンガで教師が教壇で言っていて「いいか、世間に出たら数学の理屈なんかは通用しないんだぞ」などと言っていたが、もちろん数学の理屈はそのままサイコロ賭博でも通用し、丁と半が出る確率はどちらも等しい。
しかし昔の博徒は丁が有利と信じていたのである。
テレビに出てくる元プロ野球選手などの言葉でも素人目にも怪しい疑似知識、疑似科学が多い。
プロのミュージシャンであっても「デジタルレコーディングであっても、マクセルかTDKか、メディアのメーカーによって音の性格が変わる」と言っていた人がいた。この理論を覆してやるのはなかなか難しいよ。

なお、紹介した本は「自分がある技芸に熟達するにはどうするか」に焦点が当たっているが、本書を逆に読むと「初心者にある技芸を熟達させるにはどうするか」ということも分かる。自分が経験上、なにげなく、無自覚にコード化してしまっている技芸を、同僚に伝えるにはどうすればいいか、どこで初学者がつっかえるかを語った本でもあるのだ。
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