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みなさんこんにちは、深沢千尋です。(公式ページ
文字コード【超】研究 改訂第2版NEW!」「すぐわかるPerl」「すぐわかる オブジェクト指向 Perl」の著者です。
ここでは、多くは技術的でないこと、ごくまれに技術的なことをなげやりに書いていきます。
メールは suguwakaruPerl@gmail.com まで。(アットマークは ASCII に)
Twitterはじめました。@query1000です。よろしく~

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FC2トラックバックテーマ  第776回「好きな小説。」


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ベストテンを書こうと思ったのだが、テンだと少なすぎるので20にした。
どれも自信を持ってお勧めします。
どれか読んで面白い! と思ったら、そのままズズッと同じ作家の別の作品に行かれることをお勧めします。
あと、下のリストを見て、この本が好きならこんな本も好きだろう、と思われたら、コメントにお寄せください。

それにしても絶版が多いね。

1.『神聖喜劇』大西巨人

 軍隊に入った青年が、異常な記憶力を武器に、いけすかない体育会系の上官の揚げ足を取り、追い詰めていく、それだけの話でこの長大な物語が書けるのがすごい。ちょっと作者はビョーキなんじゃないのと思うほどの筆力。途中、違う本の引用が延々入っているが、正直その部分は飛ばしました。

2.『魔の山』トーマス・マン

 青年が体を壊してサナトリウムに入院すると、同じ病院に入院しているのは始終議論を重ねている論客だった。この青年本当に体悪いのか、そしてこの病院本当に体にいいのか疑問なんだけど、その気持ち悪さを楽しんでいると面白くなってくる。途中青年が延々スキーをする部分があって、あんた体悪いんだから寝てた方がいいんじゃないのと思うけど、その部分が幻想的で美しい。

3.『我輩は猫である』夏目漱石

 誰もが中学生時代に一度は読むが、四十代過ぎないと本当の良さが分からない、奇奇怪怪の一冊。暇で暇でしょうがない明治のインテリたちが、俗悪な世間と俗悪な自分達を笑いのめす。『神聖喜劇』、『魔の山』と並べるとぼくは登場人物がずうっとしゃべってる小説が好きなのね。

4.『パルムの僧院』スタンダール

 これも青年の成長物語。無垢で美しい青年が、生まれの気高さゆえに運命に翻弄され、地方国家の政治的陰謀に巻き込まれて非業の運命を遂げるが、いつまでも魂のロマンを追い続ける。うまいことまとめるなあ俺。しかしこれ、叔母さん(ジーナ)が一番悪いんじゃないの。

5.『富士に立つ影』白井喬二

 これも『パルムの僧院』と同じく、無垢な青年の貴種漂流譚を描くものだが、『パルムの僧院』よりも明るくて読後感が良い。主人公の青年が生まれる前の先代の話から始まり、主人公の青年の死後(?)延々と話が続くところもよい。まことの主人公はその「時の流れ」なのである。

6.『トム・ジョウンズ』フィールディング

 イギリスのユーモア小説。ドン・キホーテのような道中物のパロディを書いているうちに、いつのまにか痛快この上ない道中物になっていた。原文のさまざまな文体の冒険をそのまま日本語に持って来ようとする朱牟田夏雄氏の名訳がすばらしい。

7.『自負と偏見』オースティン

 これもイギリスのユーモア小説。イギリスのユーモア小説は生々しくないのでハマらない人はハマらないかもしれないが、ハマるとそのユーモア感覚から抜け出せない。これは二組のカップルの恋の成り行きを描く恋愛小説なのだが、恋愛が成立することに家庭や近所づきあいがどのように影響を与えるかを描いている。これは新潮文庫、中野好夫氏の名訳で読みたい。

8.『悪霊』ドストエフスキー

 この本もすごいよ。翻訳が「江川卓」氏だが往年の大投手とは関係ないので注意。思想が人間を追い詰めてゆく過程を克明に書いている。途中で道徳的に非常に問題な部分があったが何回も作者は書き直し、結局削除してしまう。訳者はその意志を尊重し、削除した状態で終わらせてから、巻末に訳注として入れている。物語が完全に終わってからその部分がフラッシュバックのように、訳注の小さい字で入っているところが不気味であり、一層の効果を上げている。

9.『神々自身』アイザック・アシモフ

 名訳といえば小尾芙佐女史にとどめを差す。知的薄弱者が賢くなっていく過程を自らの手記で描く『アルジャーノンに花束を』も有名だが、ここではよりSF的な本作を上げる。「アシモフには宇宙人とセックスが描けない」と言われたため、その両方を一気に入れ込んだ作品だが、異様な迫力を持つ傑作となった。同じ出来事を地球人と宇宙人の両面から書いているのだが、翻訳者の苦労は如何ばかりであったろう。

10.『イーディスの日記』パトリシア・ハイスミス

 アメリカキリスト教原理主義の異常を描く『扉の向こうに』(原題は『People knocking at the door(扉を叩く人)』)とどちらにしようか悩んだが、結局こちらにした。理想と現実の乖離に悩むごく普通の知的な女性の人生を実験的な手法で描く作品。

11.『笹まくら』丸谷才一

 この作者も異能、多彩な人で、日本文学解説者、エッセイストとしての彼しか知らない方は本作を読んで「こんな作家がいたのか!」と衝撃を受けるのではないだろうか。兵役拒否者の孤独な道行と戦後の苦悩を筒井康隆ばりの多彩な文体の冒険で描いている。

12.『ちはやふる 奥の細道』小林信彦

 架空のアメリカの日本研究家、W.C.フラナガン氏が描いた芭蕉の一代記を小林氏が翻訳したという体裁の一冊。芭蕉忍者説を大々的に取り上げ、ハードボイルドの文体で描いている。小林氏はフラナガン氏を登場させ評論「素晴らしい日本野球」を書いたが、フラナガンの実在を信じ込んだ池井優氏がそれを批判すると、小林氏はフラナガン氏を再度登場させ(「素晴らしい日本文化」)て再批判している。続けて読んでいると笑いすぎで腹が痛くなって死にそうになる。

13.『方舟さくら丸』安部公房

 安部氏の作品は初期の『砂の女』からずっと素晴らしいが、ここでは晩年の『箱舟さくら丸』を推す。閉塞した状況が延々続く後の、ラストが素晴らしい。安部氏の作品はみなそうだが、この結末の感動を味わうには途中の過程がより長い方がいいと思う。

14.『死者の奢り・飼育』大江健三郎

 作者の作品はすべて読んでいるが、後期になるほど読みづらい。これは最初期の作品であり、最も読みやすい。分かりやすく書けば書けるじゃん! と思うのであるが、作者自身も悩んでいると韜晦気味に語っていた。書き直せば書き直すほど読みづらくなるそうで、夫人からは「あなたお願いだから初稿の段階で出版して」と言われるそうだ。それにしても面白い。引きずり込まれる。政治的な作品だが、政治を抜きにしても面白い。抜き差しならぬ状況に追い込まれていく、人間の甘美な苦痛を語っている。ぼくは文学に甘美な苦痛を求めることが多いようだ。

15.『百年の孤独』ガルシア・マルケス

 南米の小さな村の何代もの年代記。読みづらい。これはラテン系の国によくある現象だが、子供に親と同じ名前を付けるからこうなるのである。しかし面白い。奇想天外な事件の連続で、読んでいるとだんだんトリップ状態になっていく。ちなみに寺山修司の映画「さらば箱舟」はものすごく要領よくまとめてあって「寺山修司ってアタマいいなぁー」と変な感心をした。

16.『スローターハウス5』カート・ヴォネガット

 アメリカのニュー・ライターズの中ではやはりヴォネガットが好き。
 戦争の悲惨さを描いた物語だが、ユーモア感覚が生かされている。

17.『ナイン・ストーリーズ』サリンジャー

 これも野崎孝氏の名訳がすばらしい。
 この文体で書いていたような錯覚を持つ。
 短編なのだが、その前後の人生を想像させる。

18.『きまぐれ指数』星 新一

 これは中学生の頃に読んだ。中学時代はみんな星 新一氏の本をむさぼるように読んでいた。それから筒井康隆、大江健三郎と進んで気が狂う人と、本なんか読まなくなってカタギになる人に分かれたような気がする。星 新一氏といえばファンタジックなショートショートであるが、これは現代日本(東京タワーが出来た頃)の東京を舞台にしたオシャレな風俗小説である。ぼくは今もこの本に出てきた都会にあこがれている。

19.『38万人の仰天』かんべむさし

 作者は筒井康隆の後継者と目されたこともある言語実験と奇想天外な発想のSFを書いていたが、あるときを境にサラリーマン文学を書き始めた。この作品はその丁度中間に書かれた、SFサラリーマン小説とも言える小説である。かんべ氏のサラリーマン文学は今の自己啓発ブームを先取りしたような、今の企業社会と人間が生きる意味を考える小説が多いが、サラリーマンとして苦労しながらSFを読んでいろいろ思考実験をしていたであろう氏の経験が生かされている。

20.『ドグラマグラ』夢野久作

 昭和初期の懐かしい猟奇推理小説の中でも特異な一冊。さまざまな文体実験の中に本当に恐ろしい物語が隠されている。横溝正史が小林信彦と推理小説史を概観する対談をするために、前日にこの本を読んでいたら、夜中に一時的にアタマがおかしくなって、ガラスの戸棚を叩き割って怪我をしたそうだ。
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